製作日誌 構造模型     バウンティー#3

お待たせしました。

今回は、主甲板(メインデッキ)のビーム(梁)の加工です。

前回(2018年1月)、最下層甲板のビーム(梁)の取付けと船室を作業しましたが、随分時間がたってしまいましたので、おさらいです。

五十嵐 製作

バウンティ号は、海軍が、パンノキの鉢植えを600鉢ほど運搬するために1787年5月に1950ポンドで230tの商船を買取り、秋ごろまでかかって改装した武装輸送船です。

苦難の末1788年10月タヒチ島に到着 1789年4月タヒチ島を出発後、反乱が起き1790年1月ピトケアン諸島で解体したとも焼失したとも言われています。

 模型の話に戻ります。図面ですが、鉢植えの図面も英国海事博物館(National Maritime Museum)のホームページから入手できます。

アナトミーのバウンティ号にも詳細に図が掲載されています。
バウンティ号の船室の配置は特殊です。
 通常、船尾が船長室です。
バウンティー号では、ここに日当たりの関係で植木鉢629鉢のラックが置かれ、船尾は温室さながらになっています。
直径15cmの5号鉢(1.3L)が433鉢、直径20cmの7号鉢(3.5L)が196鉢です。ブライ艦長は船大工に命じて145鉢増設させ、総計744鉢収められるようにしています。
植物学者の助言で換気に注意が払われ、グレーチングが2つ追加されています。船長室は士官室に移動しています。
船首には料理用のストーブがあります。このストーブは秀逸で、湯沸し、煮炊きの他、何と蒸留水を得ることができます。 このストーブについても真鍮を銀ロウ付、半田付けで加工していきます。

この船は、最下層甲板、主甲板、上甲板の3層構造です。
最下層甲板の下はバラストと、倉庫(樽類)
最下層甲板~主甲板までの空間が兵員室ですが、船倉部分は吹き抜けになっています。
主甲板~上甲板までは、鉢植え置場と船長、士官室です。
上甲板~はデッキとなり、船首から、ウインドラス(錨鎖の巻上機)ハッチ、キャプスタン(巻上機)ビルジポンプ(排水ポンプ)、舵輪などが並びます。

   まずは、ビームがのるクランプを取り付けます。

次にビームを取り付けますが、準備作業が必要です。

 

 

○ビームはキャンバーといって孤を描きます。正確に糸鋸で切り出します。

○ビームにカーリング材の入るホゾを彫ります。

 

 


 この船の甲板構造は右図のとおりです。18世紀の英国 船の代表的な構造です。
ビーム(梁)、カーリング(縦材)、レッジ(横材)で甲板を支えます。
ビームとビームの間に、前後方向にカーリングという縦材が入ります。

図は、以前にも紹介したHistoric Ship Modelsです。

   ビーム毎にホゾを彫って、このホゾにビーム間の長さのカーリング材が入っていきます。
従って、カーリングが綺麗に一直線に並ぶには、ビームにホゾを正確に彫る必要があります。
(今回は、失敗します。ガタガタになります!!)

 カーリングとカーリングの間に左右方向の補材:レッジ(補助肋材)が入ります。

これも短いレッジがカーリングのホゾにはまる構造です。
事前にカーリング材にホゾを彫る必要があります。

 これも正確に彫らないとレッジが一直線に並びません。またビーム材と平行になりません。

 

今回は、失敗するのですが、ビームの中央線を基準に正確に左右にカーリングの入るホゾの場所を決めて彫り、船体にビームを取り付けました。これではビームを船体に取り付ける際に、ビーム位置が左右に1mmmでもズレると中心線を基準に決めたホゾの位置が船の中心線と微妙にズレます。

 結果、カーリングはガタガタになりました。

左右1mmでもズレればガタガタになることが分かりました。

 

 

 

 難しい作業です。
上級者は、船体にビームを入れる前に外側でビーム+カーリング+レッジを組んでから、船体に収めるようです。
こうすればカーリングがガタガタになることはないが、図面通りに船体が出来ていないとそもそも船体に収められません。
  ビームを張り終え木工ボンドが完全に乾いたら・・・次の作業に入ります。要は次の作業は、翌日の作業となります。レッジを載せます。木工ボンドが完全に乾く前に作業すると歪んでしまいますから、焦らずにゆっくりと作業を進めます。

   木工ボンド完全に乾いたら、ロンギング・ニーとハンギング・ニを取り付けます。
船体内側の曲線に合わせたL型のニーの作成が難しく、本作品では上手くいっていません。
 型取り粘土などを使えば簡単に内側の曲線が分かりますが、この時は知りませんでした(*_*)

   余談ですがロンギング・ニーは英国船の特徴でオランダ船にはありません。


 


ビームを張り終えた段階で、第38回ザ・ロープ・オーサカの作品展に出展するため、造船所のスリップ台を作成し造船所に横たわる情景をつくりました。

 船台は、ホームセンター売ってはヒノキより安いマホガニーを使いって、ちゃちゃっと作成し作品を間に合わせました。

構造模型のいいところは、製作中かどうか一般の方に分からないところです。
完成品でも必ず「外板は、何時張るんですか?」と聞かれます。

 


 2014年7月のことです、3月から製作に入って4ヶ月弱突貫工事でした。

大先輩方の素晴らしい船の中にあって、カーリングもレッジもガタガタで、家族からは大不評でした。

しかし、先輩方たちから、これから製作を進めるに当たっての注意点など助言をいただきました。

これを機会に、製作方針を変更します。

  材をアガジスを使っていましたが止め、銘木を多用することにしました。

構造に使用する材をアガジスから桜に変えます。

   更に、黒い部分は黒檀(実際にはカメルーン・エボニー)黄色い部分はペロパローサ、赤い部分はサティーネは高価だったので、パープルハード、外板は柘植のかわりにカステロ、彫刻は柘植です。


船長室や士官室、鉢植えを作っていきます。

 

 

 

 


   鉢植えは気の遠くなる作業でした。

船は揺れますので鉢は全て穴の開いたラックに収められていました。
穴をあけて鉢を入れるのは大変なので、鉢を上下に分割にして接着しています。

 

 鉢はラックに一個ずつ木工ボンドで貼り付け、ピンバイスで穴をあけ、瞬間接着剤でピアノ線(木の幹にあたる)を着けていきます。
物凄く手間ですが、仕上がりは上手くいったと思っています。

いくつかの長細いラックがいくつかかさなって配置されます。

 

 日当たりを考えて段違いにしています。

600鉢以上ありますので、中々派手です。

 

 

 こんな帆船は、他にはないので、ちょっと誇らしい気分になります。

 

 

 


 次は、船長室などっ部屋をも加工していきます。
最下層甲板の部屋と異なり、主甲板の部屋はちょっと豪華です。
 材もペロパローサを使いました。この材は塗ったような鮮やかな黄色です。

部屋の作成と上甲板のビーム作業は並行して進めます。
部屋の天井部分とビームの間に隙間がでないようにするためです。
ビームの弧にあわせて部屋の壁板を削りますが、結構簡単にできました。
主甲板の作業は、ほぼ半分は完了です。

このあと、グレーチングとストーブの作業が残っていますが、それは次回お楽しみに。(^^)/