憧れの構造模型を1/96の小スケールでバウンティーをちゃちゃっと作ってしまう製作日誌です。
構造模型とは?
構造模型は、主に英国で17世紀頃から造船所で構造検討の為に1/48で作られた木製模型です。ドッグヤードモデル(Dockyard models),アドミラリティ・モデル(Admiralty models),ネービーボードモデル Navy Board models. とも呼ばれます。
※Navy Board Ship Models Jhon Franklin著に詳しいです。
今回は、1/96の縮尺でバウンティー号(反乱で有名な18世紀の英国の帆船)の製作過程をご紹介します。
この縮尺は構造模型としては小さな縮尺となり、色々と工夫が必要となります。
チャンと段取りして進めているハズですが、実際に作業をすると想定とは異なるミスをし、手戻り・修正の連続です。
設計図の入手
構造模型の場合、40個以上のフレーム(肋材)を作る必要がありますので、構造模型用の設計図があると便利です。
バウンティー号はコンウェイ出版のアナトミーシリーズがあり、本に1/96の構造図面がありますが、これから実際に構造模型を作成するにはCADで手を加える必要があり手間です。
今回は構造模型では有名なハロルド・ハン氏の方式で製作します。以下のホームページにある図面が大変便利です。私はザ・ロープ・オーサカの大先輩から1/96の図面をいただきました。(現在は見れないかもしれません)
ハロルト・ハン氏は米国の構造模型の第一人者です。以下のHPに略歴が載っています。また、いくつかの著作もあります。
ハロルド・ハン氏の作成方法の特徴は、逆さにして作成することです。
ちょっとビックリですが、実際やってみると大変便利な製作方法です。
通常の造船所のようにキルーを下にして作業するとフレームの位置決めが難しく、フレームが綺麗に等間隔に並びません。前後左右にズレ、上手く出来ません。
特に小スケールの場合、基準線がキールだけはフレームの向きが微妙にずれ、収集がつかなくなり造船工事が止まってしまいます。
ハロルド・ハンの方式はキール+上端2箇所に基準を設けます。この3点で支えるため、各フレームの向きや位置がズレたりグラついたりしません。
ちょっと手間ですが、実によくできた製作方法です。
この方式の欠点は、フレームの上端を基準線まで延ばすため材が無駄になることです。
今回のような1/96の小スケールでは気にする程でもなく、私はこの方式が便利だと思います。
フレーム材の切り出し方法には2種類あります。
ひとつはハロルド・ハンの方式で板を組み合わせて接着してから糸鋸で切り出します。木目が揃い接合も綺麗にできますが、材が相当無駄になるのが欠点です。
もうひとつの方法(今回ご紹介する方法)は、材に図面を貼り付けて、糸鋸で切出し、ディスクサンダーで接合面を正確な角度で仕上げて組み上げます。
隙間なく組めるのか?と思いますが、意外にガッチリと組みあがります。
ディスクサンダーは構造模型では必須の道具です。私はブロクソンの旋盤に自作のディスクにサンドペーパーを張り付けて使っています。
材の歩留まりは図面に各フレーム部品を如何に隙間なく且つ糸のこの道を残すかにかかっています。これでも、3割は無駄になります。材は今回はホームセンターで入手しやすいアガジス材を使いましたが、これは失敗でした。やわらかくエッジが立たないのと、ワトコ仕上げが綺麗にできません。特にこの小スケール・モデルでは致命的で、ただでさえ見栄えがしないのに、アガジズ材を生地仕上げしたのは失敗で、やはり桜かペアウッド(梨)材にすべきでした。
桜は東急ハンズでハガキ大で5mm厚のものが100~200円で売っています。私は馬場銘木さんから樺桜を購入しました。ペアウッドは㈱ダイキン:唐木ドットコムで購入しています。
英国で18世紀ころ実際に作られた本物の構造模型は、柘植、ペアーウッド(梨)、アップル(林檎)が使われていました。アップル材は意外な気がしますが、海外ではフルーツ材を使うのは一般的なようです。アップル、ナシ、チェリーと堅い木の代名詞のようです。
この時代の英国船のフレームはダブルフレームといって前後で1セットです。フレームは小片で組みます。小片は底からフロアー、1stフトック左右一組、トップティンバー左右一組といった5個組の部品で構成されますので、前後で継ぎ目を補完するように千鳥に組んでいます。従って片方は4個組になります。
このフレーム小片の継ぎ目がひとつの見せ場ですので、フレーム平面図にダイアゴナル(斜線)を引いて、フレームの継ぎ目が横から見て綺麗にならぶようにします。
継ぎ目に少しでも隙間があると接着できませんから、ディスクサンダーで図面を見ながら正確な角度をつ
けます。ディスクサンダーはプロクソンからもでています。私は旋盤に自作のディスクを付けて作業しています。ディスクサンダーは構造模型必須の道具で大変重宝します。
最初の作品でしたので、隙間の多い配置にしています。
糸鋸で大まかに切り出しました。
上級者はここで各部材の前後の違いまで記入した正確な図面を使いベベル(フレームの前と後の差)まで含め内側を図面どおりに切り出し、外側を1mm程度残します。
初心者では自身がないので大分残して切り出していいますが、これは失敗です。
後からも述べますが、どうしてもフレームの凸凹が発生し特に凹んだ部分は継ぎ足すこととなります。上級者では有り得ないことなのですが、初心者では、ラインに沿ってゴリゴリ削ると、フレームが紙みたいに薄く
なるといったことが起こります。
フレームはアクリル板を挟んで締め付けてしっかり固定します。締め付けすぎるとフレーム部材がずれるので、ほどほどに締め付けます。
組んだフレーム正確に平面すきまないことが重要で、歪んだりしないように細心の注意を払います。
全てのフレームを準備できたら、重ねてズレがないか良く確認します。帆船模型は決して先を急いではいけません。キールに組んでから修正すると大変手間がかかりますから、よく確認します。
キールを切り出して、組み立てます。1/96なので、厚さは3mmで曲がら
ないように注意します。
キールにはフレーム位置を書いた図面を貼り付けます。
ジグを組み立てます。ハロルド・ハンの方式の肝で、このくし型が重要です。
この凹凸とキール部のフレームの位置図が1mmの狂いもなくピッタリ合っていることが必須です。
今回はキールに保護具を付けていませんが、失敗でした。作成中にキールが歪んでしまいました。キール補強材として、丈夫なコの字型アルミフレーム、材を入れたものとキールをホワイトボンドで仮付けし、(後で濡らしてとる)丈夫な支え台を前後に用意しこれとキール保護具で堅固なものにすべきでした。
フレームは船首側、船尾側、両方から組んでいきました。
クイック・クランプでしっかりと固定します。
キールとフレームのフロア部、冶具とフレーム先端両側を木工ボンドをつけ、しっかりクイック・クランプで固定してきます。
このやり方は失敗です。キールが曲がってしまいました。キールを太い木材に仮付けし固定すべきでした。
船首と船尾からフレームをつけていくと、段々窮屈になってきます。
こうなるともうクイック・クランプの入る隙間がありません。
次回は、ビームの取り付けです。
構造模型では、外形を成型する前にビーム(梁)を組み込まねばなりません。
そうしないとフレームをサンドペーパーで成型するときにフレームがぐらつきます。
バウンティー号はパンの木を運送するのが役目でしたから数百個の植木鉢を模型でも再現します。
どうぞお楽しみに
帆船では何層かの甲板があります。
オルロップ(最下層甲板)、メイン(主甲板)、アッパー(上甲板)です。
戦列艦では、メインの下にガンデッキが追加されますが、本船は輸送船ですからガンデッキはありません。
アナトミーに詳しい図面がありますが、英国の国立海事博物館のホームページでも図面が見れます。
最下層甲板は船員の部屋や倉庫があります。
主甲板の船尾はパンの木600鉢と士官室、船長室があります。
船尾のパンノキの植木鉢(629鉢)の配置の詳細
船首のカントフレーム(船首の斜めのフレーム))を取り付けます。
ハロルド・ハンの図面にはカントフレームもちゃんと描かれていますので作業が大変楽です。
船尾の構造は、右図のとおりです。
conway社のアナトミーシリーズのbountyからの抜粋です。
各部材の名称がよくわかると思います。
船尾のファッションピース、トランザム(船尾肋材)が5つ、その上にウイング・トランザム(船尾横翼材)と組みます。
最後部のカウンタ・ティンバー(船尾肋骨で船尾の窓部分を構成)は整形後に取り付けます。
トランザムの加工は今から見ると雑過ぎます。(反省、反省)(≧◇≦)
組み終えたら、先に内側をサンディング(成形)します。外側はそのままです。
本物と同じで、縦材で補強するまでは、フレームがグラつくため外側の成形はビーム(梁)や縦材を付けてから作業します。
1/96のバウンティーでは小さく手が入りません。
ルーターの直角アングルアタッチメントも入りません。
チューリップ状の断面の内側をどうやってサンディングするか?
私は、このような冶具を使っています。
丸棒を短く切って、直径3mmの竹ひごをシャフト代わりに付けます。
直径3~4cmの円盤に木材をカット
100均のマウスパッドも円盤状にガットし接着します。これがクッションになります。
その円より少し大きな円にサンドペーパー(から研ぎヤスリ#120)を切り、マウスパッドに接着します。
このチョット大きめというのがミソです。
このヘリ部分を上手く使うとチューリップ状の断面の側面部も良く削れます。
これをルーター(ドレメル)につけて、低めの回転数で内側を成形します。(高回転ですとシャフトが折れたりします)
実は、この道具は、モデル・シップ・ビイルダーのThe Matthew Project9ページに紹介されているツールを参考に手元にある材料で作りました。
「から研ぎヤスリ」の番手毎(#80、#120、#240、#400)と円の直径(2cm、3cm、4cm)と数種類作っておくと便利です。
内側の面が凸凹だと、ビームを支えるクランプ(ビームを支える縦材)の作業が大変です。
先を急がずキッチリと仕上げます。
内面の成形ができたら、キールソンを取り付けます。
1/96の小さな船体で接着剤が乾くまでの間、どうやって固定するのか?
私は、写真にあるような冶具を自作しました。
2mmのビスと2mmのアクリル板を用意します。
アクリル板にはタップでネジを切ります。
この冶具を使って、キールソンをキッチリと固定します。
いちいちドライバーで作業するのは手間ですが、しっかり固定できるので意外に便利です。
この冶具は、外板の固定やビーム(梁)の押さえつけにも重宝します。
次に内側のティンバー(縦材)を付けます。
フレームを固定するのが目的です。
リンバー・ストレーキ(キールの横)とビルジ・ストレーキ(湾曲部縦材)をつけます。
この船の図面にはライダー(船体内側に貼る補強材)が見当たらないので、作業を省略します。
これもアナトミーのバウンティ号からの引用です。
私の使っている糸鋸 ドレメルのモトソーです。
持ち運びを前提にした糸鋸で、大変コンパクトで私の狭い造船所にはピッタリです。
次に最下層甲板の華奢な梁をとりつけます。重量物が乗りませんから、実に華奢な梁です。
ところどころに船底へのアクセスのためのグレーチング(格子)があります。
このグレーチングの加工方法は、別の機会に説明します。
中央部が船倉で、この船は最下層甲板は船倉の部分は途切れます。
船首側と船尾側の船員の部屋を作ります。士官の部屋と比べ質素な部屋です。
扉の鉄格子もピアノ線で再現しています。
船体に取り付けた状態です。
しかし、ここまで凝っても完成すると全く見えません・・・(*_*)
メインマストの周囲が弾薬庫になっているため、この船では独特のロッカーが付きます。
これも完成すると全く見えないので凝る必要があったかチョット残念です。
次回は主甲板(メインデッキ)のビーム(梁)の加工です。
今回は、主甲板(メインデッキ)のビーム(梁)の加工です。
前回(2018年1月)、最下層甲板のビーム(梁)の取付けと船室を作業しましたが、随分時間がたってしまいましたので、おさらいです。
バウンティ号は、海軍が、パンノキの鉢植えを600鉢ほど運搬するために1787年5月に1950ポンドで230tの商船を買取り、秋ごろまでかかって改装した武装輸送船です。
苦難の末1788年10月タヒチ島の到着 1789年4月タヒチ島を出発後、反乱が起き1790年1月ピトケアン諸島で解体したとも焼失したとも言われています。
模型の話に戻ります。図面ですが、鉢植えの図面も英国海事博物館(National Maritime Museum)のホームページから入手できます。
アナトミーのバウンティ号にも詳細に図が掲載されています。
バウンティ号の船室の配置は特殊です。
通常、船尾が船長室です。
バウンティー号では、ここに日当たりの関係で植木鉢629鉢のラックで船尾は温室さながらになっています。
直径15cmの5号鉢(1.3L)が433鉢、直径20cmの7号鉢(3.5L)が196鉢で、ブライ艦長は船大工に命じて145鉢増設させ、総計744鉢収められるようにしています。
植物学者の助言で換気に注意が払われ、グレーチングが2つ追加されています。船長室は士官室に移動しています。
船首には料理用のストーブがあります。このストーブは秀逸で、湯沸し、煮炊きの他、何と蒸留水を得ることができます。 このストーブについても真鍮を銀ロウ付、半田付けで加工していきます。
この船は、最下層甲板、主甲板、上甲板の3層構造です。
最下層甲板の下はバラストと、倉庫(樽類)
最下層甲板~主甲板までの空間が兵員室ですが、船倉部分は吹き抜けになっています。
主甲板~上甲板までは、鉢植え置場と船長、士官室です。
上甲板~はデッキとなり、船首から、ウインドラス(錨鎖の巻上機)ハッチ、キャプスタン(巻上機)ビルジポンプ(排水ポンプ)、舵輪などが並びます。
まずは、ビームがのるクランプを取り付けます。
次にビームを取り付けますが、準備作業が入ります。
○ビームはキャンバーといって孤を描きます。正確に糸鋸で切り出します。
○ビームにカーリング材の入るホゾを彫ります。
この船の甲板構造は以下のとおりです。18世紀の英国 船の代表的な構造です。
ビーム(梁)、カーリング(縦材)、レッジ(横材)で甲板を支えます。
ビームとビームの間に、前後方向にカーリングという縦材が入ります。
図は、以前にも紹介したHistoric Ship Modelsです。
ビーム毎にホゾを彫って、このホゾにビーム間の長さのカーリング材が入っていきます。
従って、カーリングが綺麗に一直線に並ぶには、ビームのホゾを正確に彫る必要があります。
(今回は、失敗します。ガタガタになります!!)
カーリングとカーリングの間に左右方向の補材:レッジ(補助肋材)が入ります。
これも短いレッジがカーリングのホゾにはまる構造です。
事前にカーリング材にホゾを彫る必要があります。
これも正確に彫らないとレッジが一直線に並びません。またビーム材と平行になりません。
今回は、失敗するのですが、ビームの中央線から正確にカーリングの入るホゾを彫って船体にビームを取り付けました。これではビームを船体に取り付ける際にビームにつけた中心線が船の中心線と微妙にズレます。
結果、カーリングはガタガタになりました。左右1mmでもズレればガタガタになることが分かりました。
難しい作業です。
上級者は、船体にビームを入れる前に外側でビーム+カーリング+レッジを組んでから、船体に収めるようです。
こうすればカーリングがガタガタになることは無かったわけです。
ビームを張り終え木工ボンドが完全に乾いたら・・・要は次の作業は翌日の作業となります。
次にカーリング材を載せて、木工ボンドが完全に乾いたら・・・要は 次の作業は翌日の作業となります。
レッジを載せます。木工ボンドが完全に乾く前に作業すると歪んでしまいますから、焦らずにゆっくりと作業を進めます。
木工ボンド完全に乾いたら、ロンギング・ニーとハンギング・ニを取り付けます。
船体内側の曲線に合わせたL型のニーの作成が難しく、本作品では
上手くいっていません。
型取り粘土などを使えば簡単に内側の曲線が分かりますが、この時は知りませんでした(*_*)
余談ですがロンギング・ニーは英国船の特徴でオランダ船にはありません。
ビームを張り終えた段階で、第38回ザ・ロープ・オーサカの作品展に出展するため、造船所のスリップ台を作成し造船所に横たわる情景をつくりました。
船台は、ホームセンター売ってはヒノキより安いマホガニーを使いって、ちゃちゃっと作成し作品を間に合わせました。
構造模型のいいところは、製作中かどうか一般の方に分からないところです。
完成品でもからなず「外板何時はらはるんですか?」と聞かれます。
2014年7月のことです、3月から製作に入って4ヶ月弱突貫工事でした。
大先輩方の素晴らしい船の中にあって、カーリングもレッジもガタガタで、家族からは大不評でした。
しかし、先輩方たちから、これから製作を進めるに当たっての注意点など助言をいただきました。
これを機会に、製作方針を変更します。
材をアガジスを使っていましたが止め、銘木を多用することにしました。
構造に使用する材をアガジスから桜に変えます。
更に、黒い部分は黒檀(実際にはカメルーン・エボニー)黄色い部分はペロパローサ、赤い部分はサティーネは高価だったので、パープルハード、外板は柘植のかわりにカステロ、彫刻は柘植です。
船は揺れますので鉢は全て穴の開いたラックに収められていました。
穴をあけて鉢を入れるのは大変なので、鉢を上下に分割にして接着しています。
鉢はラックに一個ずつ木工ボンドで貼り付け、ピンバイスで穴をあけ、瞬間接着剤でピアノ線(木の幹にあたる)を着けていきます。
物凄く手間ですが、仕上がりは上手くいったと思っています。
いくつかの長細いラックがいくつかかさなって配置されます。
600鉢以上ありますので、中々派手です。
こんな帆船は、他にはないので、ちょっと誇らしい気分になります。
次は、船長室などっ部屋をも加工していきます。
最下層甲板の部屋と異なり、主甲板の部屋はちょっと豪華です。
材もペロパローサを使いました。この材は塗ったような鮮やかな黄色です。
部屋の作成と上甲板のビーム作業は並行して進めます。
部屋の天井部分とビームの間に隙間がでないようにするためです。
ビームの弧にあわせて部屋の壁板を削りますが、結構簡単にできました。
主甲板の作業は、ほぼ半分は完了です。
今回は、主甲板(メインデッキ)の残りの作業の
グレーチング(格子)と調理用のストーブ:ギャレイの製作です。
上甲板(アッパ・デッキ)の作業前に次の作業をやっておきます。
○船倉のグレーチングの作成
○ストーブ(調理用ボイラー)の作成
○階段の作成
今回は、グレーチングとストーブの製作を紹介します。
【グレーチングの作成】
グレーチングの材は、黒檀を使いました。大変脆く堅い木材ですが、仕上がりが素晴らしいです。また格子の間隔は0.5mmとしています。凹が0.5mmのミゾ 凹凸で1mmピッチです。本物が76mmですから1/96で0.5mm間隔はちょっと狭いです。
黒檀の板を櫛状に加工しお互いを組み合わせて格子にするスタンダードな方法で行います。
0.5mm間隔で格子を作る場合は、ヒノキやブナ等では歯が欠けて加工できません。サクラやペアウッド、黒檀などの材を使います。
格子間隔が非常に狭いので工夫がいります。まず長方形の板に木目と直角に鋸で0.5mm間隔でミゾを入れていきます。ミゾ同士が、正確に並行で、等間隔になっているか注意します。不正確だと、あとで櫛にして格子に組めません。あせらずゆっくりと作業します。
ミゾは必ず、木目と直角に切らねばなりません。スライスして櫛を得るときに、木目と並行にスライスするためです。スライス時に木目と直角だた、歯が欠けます。
一見簡単に思えるスライス作業ですが大変難しい作業となります。
0.5mm間隔の格子なので、櫛の厚さも0.5mmでスライスする必要があります。ここまで薄いと上手にしないと簡単に櫛の歯が欠けます。私は、厚さ0.1mmの直径13mmの丸鋸Busch(ブッシュ)スチールバー No.232 プレートソー 13.0mmを旋盤に付けて、ゆっくり時間をかけてスライスしました。ここでも工夫がいります。非常に薄い丸鋸なので、木を切っている時に、簡単にゆがんでしまいます。これを防ぐために、直系8mm程度の真鍮の分厚い円盤をつけてもいいのですが、今回は特大のヘッド:小野島 HP L8マンドレール 大頭(直径8mm)を使いました。直径が8mmもある特大のヘッドで大変便利です。これで、少しずつ切り進めて行きます。1回0.05mmずつでやりました。櫛ができたら、厚さをノギスで確認し、必要に応じてサンディングします。よほど注意しないとサンディング中に歯が欠けます。櫛を正確に格子に組みます。前後方向が上に来ます。正確に格子を組んだら、周りに木工ボンドを薄く刷毛で塗ります。ボンドは控えめにしないと、汚くなります。綺麗に乾いたら、サンディングして上側が弧を描くように加工します。仕上げにブロクソンのポリライトホイール120番(前仕上げ) ~ポリライトホイール1000番(超仕上げ) でルーターを使って磨きます。
ピカピカになります。
【ストーブの作成】
18世紀の英国船の標準装備の調理用ボイラーで、湯沸し、自動回転グリル、蒸留装置もついて秀逸なものです。英国では1780年からBrodie社のストーブを海軍標準ストーブとして採用します。艦の等級によって大きさは異なりますが、構造は同じです。 このストーブは鉄製です。1750年以前まではレンガ造りのものが一般的でした。 2つの大きな釜(1つ600L)があり、底には真鍮製のコックがついていました。(模型では省略しました。) またこの釜で海水を沸かすと、蒸気が真鍮製のパイプを通り、周りが冷却水で囲まれており、蒸気が冷えて真水が得られる蒸留装置もついてます。なお、この温まった海水を釜へ移す経路もある優れものです。煙突に風車があり、この動力で串焼き機を回転させる機能もついています。また、オーブンが2つもついており、40kgものパンを焼けたようです。
折り目の部分は回転やすりでミゾを切っています。
継ぎ目を銀ロウ付けしようとしましたが、上手くいきませんでした。
部品を分割することにしました。
パーツを切り出します。
今回は粉末半田を使いました。
簡単にはんだ付けできます。
細かなパーツも根気良く切り出し、蓋の取手など粉銀ロウとバーナーを使って銀ろう付け加工します。ロウ付け時はハニカムのセラミック台で作業します。
ボイラーの蓋です。
かなり悪戦苦闘したので、せっかくの黒染がすっかり剥げてしまいました。
実物の煙突の口の向きは風下になります。実物では回転します。模型では固定しています。
煙突の口は船首方向を向けています。
一応黒染しました。
パーツをくみ上げると、それらしくなってきました。
雰囲気を味わうために黒染しました。
一気にロウ付けしないとバラバラになります。
結構大変です。
全体の仕上げは黒染めで仕上げています。
このとき使っていた黒染め液 バーチウッド ブラスブラック メタルフィニッシュ 黒染め液 が売っていないようです。
御徒町のシーフォースで別の黒染め液が売っています。黒染め液 カラス 銅・真鍮用 200ml
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今回は、階段、ポンプ、キャプスタン、ウインドラス 鐘、舵輪の製作を紹介していきます。
最初に階段の作成です。
作成方法は、治具を作ったりといろいろな方法があります。
今回は1/96なので、階段そのものが小さく部材が薄いので以下の方法で製作しました。
0.8mm厚にしたサクラの板に階段の左右を描いた絵を貼り付けます。
0.5mm厚の回転カッターでミゾを正確に深さ0.2mmで慎重に彫っていきます。
絵に従って切り出します。
階段の踏み板は、厚さ0.5mmの黒檀を使いました。
瞬間だと後でやり直しが大変なので、使いませんでした。
ノギスを使って歪まないようにし、乾燥させます。
十分に乾燥したら、残りの段に踏み板をミゾに沿って入れていきます。
デッキにつけるように枠を黒檀で作成します。
コツは
①どれだけ正確にミゾが彫れるかです。
②踏み板の厚さが正確にミゾの幅と合っていること。
です。
黒檀は高価ですから、側板は両面テープで台に貼り付けて、正確に左右対称にミゾが彫れるように準備します。
この船ではウインドラスで錨ロープを巻き上げます。
今回はペロパローサというブラジル原産のキョウチクトウ科の比重0.8です。
塗ったようなツヤのある橙色の材で、旋盤での切削性が大変良く、加工面も大変綺麗です。
私はダイキンで購入しました。
先端を一回り小さな8角形に加工します。
更に、旋盤でベアリング部と中央のラチェット(逆転防止)の部分を切削します。
バーを差し込む穴は○ではなく□なので、注意がいります。
ラチェットの歯の部分は切削ではなく、細い棒材を貼り付けました。
ウインドラスの部品がそろいました。
側板に大きな穴をあけます。
ドリルであけると割れます。私はルーター派なので、ラウンドカッターで慎重に切削していきました。
仮組みした状態です。
この船のラチェットは2枚ありますので、可動式で組み立てました。
ラチェットの支柱に鐘がつきますので、鐘を製作します。
真鍮棒を木工旋盤で切削加工します。
切削油もなしに、目立てヤスリで削るだけです。
意外にアッサリ削れました。
上甲板にセッティングするとこうなります。
通常はキャプスタンで錨ロープを巻き上げますが、この船ではヤードと吊るリフトを巻き上げます
キャプスタンは年代ごとに形が大きく変化するので、注意します。
この船のキャプスタンは18世紀の英国船では標準的なものです。
念のため予備とあわせて2つ作っています。
真ん中にピアノ線を通して旋盤加工しています。
ロープと絡む板を注意深く6つ上下に付けます。
正確な角度で注意深く穴あけをします。
バーの穴は本当は□ですが、今回は全てのバーを取り付けますので○でいきます。
バーの角度は綺麗ですが、先輩諸氏に明らかにバーが細すぎると注意を受けました。
製作中は全く気付かなかったのですが、指摘をされてみれば、本当に細すぎました。
反省(><)
舵輪は、1703年に60門艦に原型が搭載され、最初はミズンマストの後ろに位置しましたが1735年頃からは、ミズンマストの前に位置したようです。
舵輪の導入によって、その位置が自由に設定できるようになっとship of the line Vol.2 に記載があります。
それまでのウイップ・スタッフは舵柄の上にしか位置できなかったため自由度がありませんでした。
舵輪の製作のポイントは、綺麗に同心円に3重の輪が並ぶかです。
歪まずに同心円で3つの輪を取手で支える状態に加工するには、工夫がいります。
いろいろな方法がありますが、今回は次のような方法で加工しています。
黒檀の短い棒材と旋盤で噛む部分をブナ材でしっかり接着します。
黒檀は高価なので、なるべく無駄にしたくないためです。
旋盤で3つの輪を彫ります。
これから取手を取り付けますが、まず旋盤に咥えさせたままの状態で
取手の入る穴をドリルで8つあけます。
本当は、この穴は□ですが今回は○のままいきます。
旋盤から離すと綺麗に穴あけすることが難しくなります。
旋盤に材料を咥えさせたままの状態で角度に注意しながらドリルします。
取手は、真鍮棒を加工して、作ります。
旋盤からいったんはずして取手をつけていますが、旋盤に材を咥えたままの状態で取手をつけても良いです。
取っ手は瞬間接着剤で、特に軸部分と輪の部分と取っ手がしっかり接着できているか意識します。
後で切り離したときに、取手と輪だけで舵輪を構成するわけですからシッカリ接着します。
シッカリ接着できたら、旋盤に咥えて、鋸で輪切りにします。私は厚さ0.2mmのNAKAYAの鋸で切り離しました。
取っ手が付いた状態で切り離すので十分に注意します。
今回は、舵輪を回せば舵が動くようにするつもりでしたが、舵の蝶番が堅く上手くいきませんでした。
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今回は、上甲板(アッパーデッキ)、ポンプ、舵 ピントルとガジョン、側窓の製作を紹介していきます。
最初に上甲板(アッパーデッキ)の作成です。
ビームのカンバー(反り具合)は若干ことなりますので、注意深く削ります。
カーリング、レッジのホゾ切りには、このような治具を作って正確な間隔でホゾ切りができるようにしました。
正確にホゾ切りし、カーリングが一直線になるように加工します。
今度はメインデッキとことなり良く見えますから、歪まないように正確に図面とあわせながら作業をします。
英国艦の特徴の水平のニー材(ロッジング・ニー)を綺麗にはります。
ます中央にくる黒檀を張ります。
貼る前に、下地=各フレーム材が綺麗なカーブをなしているか十分に確認し、必要があれば補正します。
板材が薄いので、この下地作業は大変重要です。
なんども曲線定規をあてて確認します。
今回は柘植の代用材のカステロを使っています。
0.5mm厚に加工しています。
この材は、非常に加工がし易く、簡単に曲がります。
ウエルの作業をします。
黒檀は曲がりにくいので、薄い板を積層しています。
○排水ポンプの作成
これもペロパローザ材に真鍮帯板を巻いています。
帯板は黒染めしています。
この当時の船にとってポンプは大変重要な装置でした。
常に漏水するためポンプがなければ沈没します。
この船は小さいので普通のポンプがだけが、付きますが、このポンプは原理上10m弱しか汲み上げられません。
船底から甲板まで10m以上ある場合は、チェーンポンプを備えることとなります。
汲み取り口は、バケツとの大きさをイメージします。
船尾の作業では、この船は小さくギャレーはありませんが、代わりに側窓が付きます。
まず最初に船体に穴を明けます。
次に側窓を作ります。
図面を何度も修正して、しっかりした寸法で部材を作ることがコツです
なんども確認した後に、黒檀とペロパローサ材で組み立てていきます。
完成がこんな感じです。
この窓周りに装飾がつきます。
装飾は、端材に薄いカステロ材を軽く張り付け、削っていきます。
形になったら、水を少しつけて、端材から離します。
舵の作成
まず、ピントルとガジョンを真鍮板、真鍮パイプ、真鍮棒から作成します。
結果的に失敗するのですが、今回はビントルは真鍮板(0.1mm厚)と真鍮棒、直径0.5mm ガジョンは真鍮板と真鍮パイプ(外径1mm内径0.6mm)を銀ロウ付けしました。
スムーズにラダーを動かすにはピントルも真鍮板に真鍮棒を直付けするのではなく、真鍮パイプをロウ付けし、その穴に真鍮棒を入れるべきでした。
真鍮板と真鍮パイプの銀ロウ付けはいろんな方法がありましが、私は真鍮パイプに直径0.5mmkピアノ線(比熱が異なりくっつかない)をいれて
真鍮板と直角になるように固定し、接着部分意外はブロックで隠してバーナーで加熱しています。
銀ロウ付けは半田や瞬間接着材とは比較にならないほど強力に付きます。
銀ロウは少しでいいです。(高価ですし・・・)
バーナーの当て方は経験が必要です。
ゆっくり加熱し、銀が流れるのが見えれば、即バーナーを止めます。
最初は、銀が流れる状況は、中々見えません。慣れてくるとハッキリと見えます。
真鍮板を溶かして団子にしてしまったり、加熱不足でつかなかったりします。
○部材をサンポールなどで、しっかり酸洗いすること。
○接着する部材同士はしっかり密着していること。
○加熱は、周りから徐々に銀を置いた部分にゆっくり加熱すること
○銀が流れたら直ぐにバーナーを止めること
○しっかり酸洗いしフラックスを落とし、その後水洗し、残った酸を洗い流します。
その後、黒染めします。
ガジョンとピントルの合わせはコツがいります。
最初にガジョンを一つ船体に瞬間接着剤で付けます。
その後、ガジョンの穴にピアノ線を通して全てのガジョンを一直線にならべ、順次船体に瞬間接着剤でつけます。
ガジョンにあわせて、ピントルの位置を決めていきます。
この船では舵が取り外せますが、そのため凹部の切込みが長くなっています。
取り外しをしなければ、凹部は短くできます。
今回は失敗しましたが上手に加工すると舵は自由に抵抗無く動くくらい精度の高いガジョン・ピントルがセットできます。
次作のオランダのフルート船では、舵輪ではなくウイップ・スタッフですが、軽く柄を動かすと舵もしっかり動きます。
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チーク・ニーとヘッド・レールの加工をします。
チーク・ニーは上下二本、ヘッド・レイルも上下二本。
いずれも黒檀をペロパローサでサンドイッチして黄色>黒>黄色にしています。
この部材ポイントは船の外側のラインとピッタリ合うことです。
図面どおり作ったつもりでも、必ず大きくずれるので、実際に船の外側の形状を測る必要があります。
方法としては
○型取ゲージを使う
私は、好みで石粉粘土で型をとります。
乾燥に時間がかかりますが、何度も再利用できること。
乾燥すると粘土はスカスカなになりますので、簡単に鋸でカットでき重宝しています。
他には型取用の合成樹脂=「型取くん」もあり、お湯で煮て使うもので、これも再利用可能で便利です。
型取り用の油粘土もあります。
どれを活用するかは? このあたりは好みです。
ヘッド・レールは3本ではなく2本なので比較的単純ですが、それでも3次元の曲線となっているので大変です。
現物合わせで修正するしかありません。
寸法を何度も確認し、端材で型どりを作りながら、コテで曲げていきます。
結構苦労するところですが、ゆっくり綺麗に作業をします。
決して急いではいけません。
セコイ技ですが、先に左舷で練習してから右舷の作業をします。
展示のときに右舷が手前に来るためです。
名人は0.5mmのピアノ線を平刃に加工して彫られるようです。
私には無理なので、ルーターを使います。
このような小さな彫刻用のルーターは低回転のときにトルクが太くないと、作業中に滑って上手くいきません。
東京のロープの方のお勧めで、このルーターを使っています。
芯がまったくぶれず、超低回転でも安定しており、トルクも極太です。
ラウンドカッターを使うと全く滑らないため0.8mmのデッドアイに0.2mmの三つ目をあけることができます。
回転は足踏みペダルで調整すますので、便利です。回転方向もスイッチで右左どちらでもできます。
高価なルーターですが、それだけの精度をそなえた一品です。
ルーターに0.3mmのラウンドカッターで鉛筆のとおり削っていきます。
気をつけないと簡単にラウンドカッターが熱で変形し団子になるので、注意します。
切れ味は超鋼のラウンドカッターの方が良いです。ちょっと高価です・・・
0.5mmのラウンドッターや円柱のカッター、円錐のカッターなど十数種類のカッターを駆使して彫刻します。
今回始めてのフィギュアヘッドですが、結果は、幅が広になりすぎて失敗です。
人物像とくに頭の彫刻はコツがいります。
洋書ですが、以下の本が参考になります。
Carving Classic Female Faces in Wood
船尾の装飾作業です。
18世紀の輸送艦ですから17世紀のバロック調のオランダ船の装飾と比較して大変地味です。
それでもスクラッチで作業するのは大変です。
バウンティ号の場合、船尾のオリーブの模様と船名をどうするかです。
今回はカステロ材を0.5mm厚に加工して、堅い台木に軽く木工ボンドで接着し、ルーターで彫りました。
BOUNTYもチャント削れています。
水で台木から離します。
時代のイルカは本当に怪獣でなんとイルカにウロコがあるのですが、この時代の代表的な装飾です。
プープの側面は、外側が黒檀の茶色系のものを、内側にパープルハートを貼っています。
内側は赤色にしたかったのですが、よく使われるサティーネは高価なので、廉価なパープルハートを使っています。