◎スクリュー駆動可能の帆船
咸臨丸は当時としては最新鋭のプロペラスクリューで動く船だったんです。
オランダに発注する際、幕府は外車船が最先端の船だと思っていたので、その仕様で注文したのですが
オランダ側から今や世界はスクリューの時代ですって教えられ、仕様変更したぐらいで当時の船の技術は目まぐるしく変革した時代だったんですね。 投稿 米川
石炭を焚いて水から蒸気を発生させ、その蒸気をシリンダーに送ってエンジンを回転させ プロペラを回す、全く新しいシステムだったんですが、その水が海水だったため加熱された海水の塩分は 濃くなりボイラーを痛めるため長持ちしなかったらしく、建造後9年でエンジンもボイラーも取外して、ただの帆船になったという話です。
最後は残念な形になってしまったんですね
特筆すべきは、このプロペラは駆動シャフトから外れて船体上部に引き上げて格納できるようになっていたんです。
と言うのも、まだ石炭が高価な時代、ずっとエンジンを回して航海するのは高くつく、エンジンの効率も低かったんでしょうね。
それで陸から離れて巡航するときはセールを張って帆走、港に近くなるとプロペラスクリューと動力を切り替え。
そこでプロペラが水中に浸かったまま帆走すると抵抗が大きくなるので帆走中は引き揚げる。
理にかなった構造、なかなか面白い構造、着眼点がいいですね。
プロペラを四角い枠に嵌め、枠ごと持ち上げてプロペラを水中から出すという機構なんです。
そこで、疑問が湧くのは、当然引き揚げる前に駆動シャフトとプロペラを切り離す必要がある。
また逆に引き下げて定位置に置いた時、シャフトとジョイントしなければならずこのあたりはどういう機構で操作していたのか気になります
船の科学館資料ガイド7に内部精密解剖図が記載されいて、その絵を見るとエンジンからプロペラのシャフトの中間にクラッチがある。
なるほど、ここで切り離すのかまた、他の書物には脱着する前にプロペラが垂直に位置するように駆動シャフトを船の 科学館資料ガイド7 内部精密解剖図より手動で回転させていたともある。
なにかシャフトに目印でもついていたのかと、考えてしまいますねえ
プロペラとシャフトのジョイント部はどういう形状になっていたのか、詳しい記述がないのでわかりませんが、垂直の状態の時にスライドして切り離せるように、プロペラ側は平行の溝シャフト側は平行の突起、こんな機構だったのかと思いを巡らせるのも楽しいですね。
◎煙突が伸び縮み
咸臨丸の煙突は伸び縮みしたんです。 煙突は高いほうが排気が良く、エンジンの効率が上がる、でも帆を張って帆走するときは邪魔になる。それで帆走時は煙突を下げる。
これも非常に理にかなっているが、そんな船私は聞いたことがない。
三段の上下伸縮式でこの操作は機関室で手動でハンドルを回し操作していたとあるが機構の詳細はわからないが、びっくりしてしまいます。
◎ターンバックルでシュラウドを締める
シュラウドの船体への取り付けは当然三つ目滑車のデッドアイと思われていたのですが、
1974年に新潟の旧家から咸臨丸の帆装の図が発見されて、そこにはデッドアイじゃなくターンバックルで取り付けられていた絵になっていたんです。
ターンバックルが最新式だったんですね。ただ、それが良いとなればその後の船はターンバックルかというとそうでもないんですね。
以前に私が作ったブルーノーズは1921年のカナダの船ですが、バウスプリットはターンバックルで引っ張るようになってはいるんですが、シュラウドはやっぱり三つ目滑車を使ってるんですね。
それぞれに使い勝手があったのかなあと思いますね。
出典書籍
船の科学館 資料ガイド7 発行:(財)日本海事科学振興財団 船の科学館
幕末の蒸気船物語 著者:元綱 数道 発行:㈱成山堂書店