帆船豆知識 №5

 例会で出た素朴な疑問にお答えする帆船についての豆知識のコーナーです。
今回の質問は?
Q グレーチングのハッチ・コーミングの継ぎ方です。
Q
 白井先生の著書「帆船模型製作技法」にこう書いてありますが、45度で継ぐのは間違いでしょうか?

A
もちろん白井先生の著書のとおりです

P.Goodwin著のThe  Construction and Fitting  of the English Man  of warにも同様の記述があります。
海外の構造模型や書籍等でもそういつ継ぎ方がほとんどです。

ただ、若干のバリエーションがあるようです。
J.Franklin著のNavy Board Ship Modelsに以下のような3種類の継ぎ方がみられると紹介しています

この本は、書名のとおり英国の公式構造模型の解説書です。

Cが45度で継いでいる例となります。
 他にも有名な17世紀のニコラス・ウイスティンの著書に次のような絵があります。

先ほどのウイスティンの本をオランダ帆船の第一人者のA.J.Hovingが英訳しています。

その著書の模型でも見られます。

 


H.Ketting」著のプリンスウィレムのイラストです。

下のイラストのハッチ枠をよーく見ると45度で継いでいます。

 

ただ、基本は白井先生の著書のとおりであることは間違いないようです。

第4回でも説明しましたが、
基本的にはハッチの枠(コーミング)にグレーチング(格子)の入る溝、更に、その上に蓋の板を乗せる溝または、キャンバス(布)で覆うための環等がついています。
雨天時に水が入らないように蓋ができるとともに、枠(コーミング)が小高くなって防波堤になって雨の進入を防いでいます。
英国艦だと20,30cm以上もありかなり高いです。
ただ、オランダ船でが事情が異なります。
基本的にハッチ枠(コーミング)は低いです。

英蘭戦争で有名なルイテル提督の旗艦De7Provincien(多分キットはありません)の図面を見ていると、以下のように
なんと、枠がありません。
ビームとバインディング・ストレーキに直接グレーチングの入る溝が切られているものです。

 

他にもH.Winter著のDer Hollandishche Zweidecker von 1600/70(オランダの二層戦艦)にも写真があります。
これを模型で表現されている例をまだ見たことはありません。
キットがないので、スクラッチとなりますが、製作例はありますが、グレーチングは枠ありで製作されているようです。
図面自体が種々ありますので・・・・
それにしても枠の無いグレーチングは製作者泣かせです。


この図面を見ていただくと白井先生の著書にもあるように、グレーチングの縦横は櫛状の材が縦横かみ合っているのではなく

凹は横材にのみ刻み、縦材は薄い単なる板で一切溝は掘られていません。
この図面はHPの図面で表示のインチはアムステルダムインチですから2,54cmではなく2.6cm、1フィートも12インチではなく、
28.5cmですので注意して下さい。
縦材は横材の半分以下の薄い単なる板で溝は掘られていません。
オランダ船の場合、極端な例として、凹の溝を掘らずに、横材の上に単に縦材が釘付けされている例もあります。
今回はこの辺で、また次回をお楽しみに(^^)/