製作日誌 構造模型バウンティー#1

bounty A 001憧れの構造模型を1/96の小スケールでバウンティーをちゃちゃっと作ってしまう製作日誌です。
今回から始まるニュー企画です。
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構造模型とは?
  構造模型は、主に英国で17世紀頃から造船所で構造検討の為に1/48で作られた木製模型です。ドッグヤードモデル(Dockyard models),アドミラリティ・モデル(Admiralty models),ネービーボードモデル Navy Board models. とも呼ばれます。
Navy Board Ship Models Jhon Franklin著に詳しいです。
 今回は、1/96の縮尺でバウンティー号(反乱で有名な18世紀の英国の帆船)の製作過程をご紹介します。
 この縮尺は構造模型としては小さな縮尺となり、色々と工夫が必要となります。
チャンと段取りして進めているハズですが、実際に作業をすると想定とは異なるミスをし、手戻り・修正の連続です。
設計図の入手
構造模型の場合、40個以上のフレーム(肋材)を作る必要がありますので、構造模型用の設計図があると便利です。
bounty A 003 バウンティー号はコンウェイ出版のアナトミーシリーズがあり、本に1/96の構造図面がありますが、これから実際に構造模型を作成するにはCADで手を加える必要があり手間です。

今回はハロルド・ハンの方式で製作しますので、以下のホームペbounty A 008ージにある図面が大変便利です。私はザ・ロープ・オーサカの大先輩から1/96の図面をいただきました。

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bounty A 007ハロルト・ハンは米国の構造模型で大変有名な方で、以下のHPに略歴が載っています。また、こういった著作もあります。


bounty A 030 ハロルド・ハンの作成方法の特徴は、逆さにして作成することです。

 ちょっとビックリですが、実際やってみると大変便利な製作方法です。
 通常の造船所のように作業するとフレームの位置決めが難しく上手く出来ません。
 特に小スケールの場合、基準線がキールだけはフレームの向きが微妙にずれ、収集がつかなくなり造船工事が止まってしまいます。
ハロルド・ハンの方式はキール+上端2箇所に基準を設けますので、各フレームの向きや位置がズレたりグラついたりしません。
この方式の欠点は、フレームの上端を基準線まで延ばすため材が無駄になることです。
今回のような1/96の小スケールでは気にする程でもなく、私はこの方式が便利だと思います。


 フレーム材の切り出し方法には2種類あります。
 ひとつはハロルド・ハンの方式で板を組み合わせて接着してから糸鋸で切り出します。木目が揃い接合も綺麗にできますが、材が相当無駄になるのが欠点bounty A 005です。

 

もうひとつの方法(今回ご紹介する方法)は、材に図面を貼り付けて、糸鋸で切出し、ディスクサンダーで接合面を正確な角度で仕上げて組み上bounty A 006げます。

 

 

 


組めるのか?と思いますが、意外にガッチリと組みあがります。

ディスクサンダーは構造模型では必須です。私はブロクソンの旋盤に自作のディスクにサンドペーパーを張り付けて使っています。


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材の歩留まりは図面に各フレーム部品を如何に隙間なく且つ糸のこの道を残すかにかかっています。これでも、3割は無駄になります。材は今回はホームセンターで入手しやすいアガジス材を使いましたが、これは失敗でした。やわらかくエッジが立たないのと、ワトコ仕上げが綺麗にできません。特にこの小スケール・モデルでは致命的で、ただでさえ見栄えがしないのに、アガジズ材を生地仕上げしたのは失敗で、やはり桜かペアウッド(梨)材にすべきでした。
桜は東急ハンズでハガキ大で5mm厚のものが100~200円で売っています。私は馬場銘木さんから樺桜を購入しました。ペアウッドは㈱ダイキン:唐木ドットコムで購入しています。


本物の構造模型は、柘植、ペアーウッド(梨)、アップル(林檎)が使われていました。アップル材は意外な気がしますが、海外ではフルーツ材を使うのは一般的でアップル、ナシ、チェリーと堅い木の代名詞のようです。

 

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この時代の英国船のフレームはダブルフレームといって前後で1セットです。フレームは小片で組みます。フロアー、1stフトック、トップティンバーといった5個組の部品で構成されますので、前後で継ぎ目を補完するように千鳥に組んでいます。従って片方は4個組になります。

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このフレーム小片の継ぎ目がひとつの見せ場ですので、フレーム平面図にダイアゴナルを引いて、フレームの継ぎ目が横から見て綺麗にならぶようにします。
継ぎ目に少しでも隙間があると接着できませんから、ディスクサンダーで図面を見ながら正確な角度をつ

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けます。ディスクサンダーはプロクソンからもでています。私は旋盤に自作のディスクを付けて作業しています。ディスクサンダーは構造模型必須の道具で大変重宝します。

 最初の作品でしたので、隙間の多い配置にしています。

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糸鋸で大まかに切り出しました。

上級者はここで各部材の前後の違いまで記入した正確な図面を使いベベルまで含め内側を図面どおりに切り出し、外側を1mm程度残します。
初心者では自身がないので大分残して切り出していいますが、これは失敗です。

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後からも述べますが、どうしてもフレームの凸凹が発生し特に凹んだ部分は継ぎ足すこととなります。上級者では有り得ないことなのですが、初心者では、ラインに沿ってゴリゴリ削ると、フレームが紙みたいに薄く

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なるといったことが起こります。

 フレームはアクリル板を挟んで締め付けてしっかり固定します。締め付けすぎるとフレーム部材がずれるので、ほどほどに締め付けます。
組んだフレーム正確OLYMPUS DIGITAL CAMERAに平面すきまないことが重要で、歪んだりしないように細心の注意を払います。

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全てのフレームを準備できたら、重ねてズレがないか良く確認します。帆船模型は決して先を急いではいけません。キールに組んでから修正すると大変手間がかかりますから、よく確認します。


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キールを切り出して、組み立てます。1/96なので、厚さは3mmで曲がらOLYMPUS DIGITAL CAMERA

ないように注意します。

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キールにはフレーム位置を書いた図面を貼り付けます。

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ジグを組み立てます。ハロルド・ハンの方式の肝で、このくし型が重要です。
この凹凸とキール部のフレームの位置図が1mmの狂いもなくピッタリ合っていることが必須です。

 

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今回はキールに保護具を付けていませんが、失敗でした。作成中にキールが歪んでしまいました。キール補強材として、丈夫なコの字型アルミフレーム、材を入れたものとキールをホワイトボンドで仮付けし、(後で濡らしてとる)丈夫な支え台を前後に用意しこれとキール保護具で堅固なものにすべきでした。

 

 


 

フレームは船首側、船尾側、両方から組んでいきました。

クイック・クランプでしっかりと固定します。


 

キールとフレームのフロア部、冶具とフレーム先端両側を木工ボンドをつけ、しっかりクイック・クランプで固定してきます。

このやり方は失敗です。キールが曲がってしまいました。キールを太い木材に仮付けし固定すべきでした。


 

船首と船尾からフレームをつけていくと、段々窮屈になってきます。

 

 

 


 

こうなるともうクイック・クランプの入る隙間がありません。

 

次回は、ビームの取り付けです。
 構造模型では、外形を成型する前にビーム(梁)を組み込まねばなりません。
 そうしないとフレームをサンドペーパーで成型するときにフレームがぐらつきます。
   バウンティー号はパンの木を運送するのが役目でしたから数百個の植木鉢を模型でも再現します。
 どうぞお楽しみに
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