製作日誌 構造模型 バウンティー号 #8

前回投稿した6月から半年も経ってしましました。
1/96の構造模型です
第8回は、旋回砲の設置からスリップの製作で完成です。

旋回砲の加工

バウンティ号には旋回砲(スイベル)が付きます。
1/2ポンド砲で、前装砲です。

大砲の作り方はいくつかありますが、今回は一番面倒な真鍮棒からの削りだしで作成します。
直径3mmの真鍮棒を普通のプロクソンの木工旋盤を使って、バローベのヤスリで削り出しました。
切削油は使わず、水で冷ましながら切削しました。
結構サクサクと削れます。
10門削ります。結構手間です。


 

 次に砲耳を取り付けます。
砲を支えるフォークを作成します。
真鍮線を叩いて平らにします。

 

 それをナイフで2つに切って、フォークに加工しています。

 

 

 

 精密ルーターで穴をあけます。
ここまで細かいとドリルでは滑って上手くいきません。

 

 

 ラウンド・カッターで穴をあけます。

ラウンド・カッターは1本100円未満でドリルより廉価です。

 

 


 ラウンドカッターのカタログはこちら

私は東京の御徒町のシーフォースさんで買っています。

駅から歩いても10分かかりませんが、ネットも便利です。

送料もネコポスが使えますので安いです。

 


 ラウンド・カッターは熱を持つと簡単に鉄の塊になってしまうので、こまめに水に浸けて冷やします。

 

10門できたところです。

 

 

 


デッドアイの加工

デッドアイは黒檀を加工して作っています。
黒檀を使う理由は、非常に小さな場所に3箇所も穴あけをするので、硬い木材が必要で、なおかつ黒い木材が都合が良いためです。
旋盤で棒状に加工し、切り離してデッドアイにしていきます。
黒檀は非常に硬く、また切子が粉末状なので、注意します。

 デッドアイの上側はシュラウドと(構造模型なので省略)下側は金属でチャネルと固定します。
真鍮線で加工しますが、この加工がひと手間です。
チャネルは、大小3つの輪で構成されます。それと8字をしたものが付き、釘でとめます。
 輪は真鍮線に心棒に巻き付けてコイル状にし、コイルを良く切れるニッパーで切ります。
切り口が綺麗な方が後の作業がしやすいので私はKEIBAの薄刃ニッパーかホーザンのミニチュアニッパーを使っています。
これらの薄刃仕上げのニッパーは切り口が綺麗ですが1mm以上の銅線を切ると刃が欠けます。ご注意を!

輪は真鍮線を銀ロウ付けして作りますが、各々繋がってますので工夫がいります。
小さい輪から順番に銀ロウ付けして輪にします。

小さな輪を作ってから大きな輪を通して、小さな輪の部分をブロックで隠します。

 

 

 これでバーナーの炎が小さな輪にあたりません。
あたると小さな輪の銀ロウが溶けてしまいます。
「断熱ジェル」もあるのですが、多い隠すだけで、十分加工できます。

 後で力をかけて変形させますから、シッカリ銀ロウ付けしないと、輪が外れてしまします。
勇気をもって銀ロウ付け後にシッカリ接合されているか引っ張って確認します。

 銀ロウ付けは、清潔と密着がコツですので、良く磨いて密着させて、ほんの少しの銀ロウで的確に炙ります。
真鍮線が大変細いので、注意深く炙らないと真鍮線が溶けで塊になってしまいます。
塊にならないように、且つシッカリ加熱します。
銀が光ったら「慣れれば、簡単に見えるようになります。」サッと炎をよけて水に浸けて冷却します。

 デッドアイに装着したら、真鍮線を黒染めします。
私は、パーチウットの真鍮用の黒染め液を使っています。
10年ほど前に入手してまだ使っていますが、現在は入手難のようです。
先ほどの御徒町のシーフォースでも別の「カラス黒染めセット」を売っています。

濃い目の黒染め液を筆で塗る方法もあるようですが、
私は、黒染め液は薄めにして数分程度浸しています。

 

 

 デッドアイも一緒に黒染め液に浸します。

黒檀が割れたりはせず、真鍮のみ綺麗に染まります。

 

 

 

 

 

 


8字の金具も染めます

 

 

 

 


 真鍮を旋盤で切削して釘を製作します

 

 

 

 


 

 

 

 

 


釘も黒染めします。

 

 

 

 


 チャネルにデッドアイを装着したところ

 

 

 

船体に取り付け、8字金具を釘で留めます。

 

 

 


船台(スリップ)の作成

船台は、造船所のスリップを再現してます。

作成方法としては、台となる枕木を並行に等間隔の隙間で交互に敷き詰められるように治具を製作しています。

 


これに、ホームセンターで買ったヒノキより安いマホガニーを敷き詰めていきます。

大変硬い木材です。

 

 

スリップ台の傾斜に合わせて切削する必要がるのでガイドとなる治具を作ります。

 

 

 そのガイドを使って大きな板に張ったサンドペーパ#120でゴリゴリ削ります。

 

 

 レールの部分も別に作成、板に枕木を並べて、その間に鉄道模型用の敷石を巻いています。
レールの上の楔上の台は正確に再現しています。
船とはピアノ線で接合しています。

構造模型の場合は接合点がキールの厚さだけなので、強度的に不安が残りますが、何とかなっています。


 

 英国の場合は、船尾から進水します。実際は進水式の前にクレードルという籠を前後にとりつけます。これが船を前後で支えるとともに滑らせる働きをします。

スリップ台の楔を外すと、船の重量がクレードルにかかるようになります。グレードルが船が傾かないように支えて進水させます。
現代の進水式の様にサッと滑り込んで進水するのではなく船が傾かないようにゆっくりと滑らせ進水させます。また、台が船の重さでスリップ台が沈みこまないように枕木に載る様に工夫されています。

英国の造船は設計図を描き、構造模型を作り、設計に間違いがないか良く検討し造船場で原寸大の図面を床に描き、型を起こし、それにあわせて部材を木材から切り出し船を組み上げていました。
産業革命前にここまでやっていたのは驚きです。

実は、この当時、英国では既に乾ドックもありましたが、このような小さな船はスリップ台で造船されていました。

構造模型は大変難しいようですが、シッカリした図面があり、この大きさであれば結構簡単に作成できます。

もうチョット大きな方が作りやすいかもしれません。
ただこの大きさだと、飾る場所が大変コンパクトですし、運ぶのもとても簡単です。
家族には帆もヤードもないのに帆船???
作品展でも必ず「この船いつ完成しますか?」と聞かれますが(苦笑)

バウンティー号の製作日誌はここまでです。
ありがとうございました。(^o^)/